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大阪地方裁判所 昭和55年(ワ)135号 判決

【主文】

一  被告らは、別紙物件目録(三)記載の建物において、宝石商、貴金属商、及び、時計商を営んではならない。

二  被告らは、連帯(不真正連帯)して、原告らに対し、昭和五五年一月二六日から前項の営業停止に至るまで、一ケ月金一九万六〇〇〇円の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、これを三分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

五  この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。

【判旨】

三そこで、次に、原告らが被告らに対し、被告らの右営業の禁止(差止め)を求める権利があるか否かについて判断する。

1 <証拠>を総合すると、次の事実が認められる、すなわち、

(一) 本件(一)の建物は、九階建、総戸数六二戸(内店舗は六戸)の分譲マンションであつて、訴外浅沼興産が建設して分譲売却したものであるが、右建物の分譲に当つては、その一階部分は、店舗又は事務所として分譲売却し、また、右分譲に際しては、訴外浅沼興産において、建物の区分所有等に関する法律に基づき、あらかじめ本件管理規約及び使用細則を定め、これを各購入者に示してその内容を説明し、分譲購入後は、右管理規約及び使用細則を遵守することの承諾を得て、分譲売却をしていたこと、

(二) ところで、本件管理規約一一条三項には、本件(一)の建物の分譲建物部分を買受けた各区分所有者が、その専有部分を使用するに当つては、共同の利益を守り、良好な環境を保持するため、本件使用細則を遵守するものと定められており、また、本件使用細則一五項は、本件(一)の建物の一階部分は、店舗又は事務所の用に供するものとし、なお、店舗については、互いに競業関係になることを避けるため、その営業内容につき、営業を開始する前に、管理者の書面による同意を得ること、営業内容を変更する場合も同様とするとの旨定められていること、

(三) したがつて、訴外浅沼興産は、本件(一)の建物のうち、店舗に供する一階部分の分譲申込者に対しては、分譲申込の際に、その営業内容を申出させて、取敢えず、口頭でこれに承認を与えると共に、分譲後は、右申込の際の営業内容を遵守するように求め、その承諾を得て、右分譲をすることにしていたこと、

(四) ところで、原告らは、かねてから宝石、貴金属、時計等の外商をしていたところから、本件(一)の建物の一階部分のうち本件(二)の建物の分譲購入申込に際しても、同建物において、右宝石、貴金属、時計等の販売の外、ホームドライクリーニングの取次商等を営む旨申出て、訴外浅沼興産にその了承を得て、昭和五三年四月頃、本件(二)の建物を代金一三〇〇万円で購入したこと、なお、原告らは、右購入に当り、本件管理規約及び使用細則を遵守することを承諾したこと、

(五) そして、原告らは、昭和五三年四月に本件(二)の建物に入居し、当初は、ホームドライクリーニングの取次商を営んでいたところ、その後、昭和五三年一〇月七日、訴外浅沼興産に対し、正式に、本件(二)の建物における営業内容についての同意願いの書面を提出し、同月一六日、右浅沼興産から、書面により、ホームドライクリーニング取次店及び、宝石、貴金属販売の営業に関する同意を得て(但し時計の販売については、後日追完して書面による同意を得た)、昭和五四年二月から、本件(二)の建物において、従前からのホームドライクリーニングの取次店に併せて、宝石、貴金属、時計等の販売業を営むようになつたこと、

(六) 一方、被告らは、かねてから宝石、貴金属、時計等の販売をしていたところ、当初は、訴外浅沼興産に対し、昭和五二年九月一八日、本件(一)の建物の一階部分のうち、一〇五号店舗で眼鏡店(コンタクトレンズメガネ商)を営む予定であるとしてその購入申込をしたが、同年九月二〇日に一旦一〇三号店舗を購入することに変更し、さらにその後一〇五号店舗である本件(三)の建物にその購入申込を変更し、改めて本件(三)の建物で右眼鏡店を営むものとしてその購入申込をし、右営業に関し、訴外浅沼興産の了承を得て、昭和五三年二月一八日、正式に本件(三)の建物を代金二七九〇万円で購入したこと、そして、被告らは、右本件(三)の建物の購入に当り、本件管理規約及び使用細則を遵守することを承諾したこと、したがつて、被告らは、本件(三)の建物では、眼鏡店を営むことを前提としてこれを購入したものであること、

(七) ところで、被告らは、本件(三)の建物を買受けた後も、暫くはこれに入居しなかつたところ、その後、訴外浅沼興産の求めにより、本件(三)の建物において営む営業の同意願いに関する書類を提出したが、右同意願書には、本件(三)の建物で営む営業内容を、当初の申出と異る時計、眼鏡、宝石販売としたので、訴外浅沼興産は、右被告らの申出た営業内容は、被告らが本件(三)の建物を購入する際に申出た営業内容と異なり、かつ、原告らが、訴外浅沼興産の承認を受けて、本件(二)の建物で営むことにしていた営業内容とも競業の関係になるところから、右被告らの申出にかかる営業内容については、その同意を与えることはできないとして、右同意を与えず、そのまま同意願に関する書類を被告らに返却したこと、

(八) しかるに、被告らは、本件管理規約及び使用細則の定めに違反し、当初本件(一)の建物を管理していた訴外浅沼興産、及び、その後昭和五四年三月三一日に右管理の権利義務を承継した本件(一)の建物の管理組合(ハイマート・ニュー関目管理組合)の書面による同意を得ることなく、昭和五四年一一月二一日から、本件(三)の建物において、原告らの営業と競合関係にある宝石、時計販売等の営業を始め、その後訴外浅沼興産からこれについての警告を受けたにも拘らず、引き続き右営業を続けていること、

(九) なお、本件(二)の建物と本件(三)の建物とは互いに隣接しており、原告らは、被告らが本件(三)の建物で前記営業を続けていることにより、多大の迷惑を受け、後記の如き損害を被つていること、

以上の事実が認められ<る。>

2  しかして、以上認定の事実からすれば、本件(一)の建物についての本件管理規約及び使用細則は、建物の区分所有等に関する法律(同法二三条以下)に基づいて作成されたものであるから、その合理的な限度で、法律に準じた効力があるというべく、また、本件管理規約及び使用細則には、本件(二)の建物や本件(三)の建物その他本件(一)の建物の一階部分は、店舗又は事務所とし、かつ、そこで営む営業の業種については、互いの競業関係を避けるため、あらかじめ管理者の書面による同意を得ることと定められているところ、被告らは、右の如き定めのある本件管理規約及び使用細則を承認し、これを、遵守することを約して本件(三)の建物を買受けたものというべきであるから、被告らは、本件(一)の建物の管理者の同意を得なければ、本件(三)の建物において、時計、宝石、貴金属の販売等の営業を営むことはできないのであつて、被告らがこれに違反して右営業を営んだ場合には、本件管理規約及び使用細則の定められた趣旨、その他前記認定の如き本件(一)の建物が分譲された経過に照らし、被告らと同じく本件管理規約及び使用細則を承認し、これを遵守することを約して本件(一)の建物の店舗部分を買受けたもので、かつ、被告らと競業関係にあつて損害を被るものは、本件管理規約及び使用細則違反を理由に、被告らに対し、直接その営業の禁止(差止め)を求める権利があるものと解すべきである。ところで、前記認定の事実からすれば、原告らは、本件管理規約及び使用細則を承認し、これを遵守することを約して本件(二)の建物を買受け、かつ、その営む営業につき、本件(一)の建物の管理者であつた訴外浅沼興産の書面による同意を得て、適法に、本件(二)の建物において、ホームドライクリーニングの取次店、宝石、貴金属、時計の販売等を営んでいるところ、一方、被告らは、本件(一)の建物の管理者の同意を得ることなく、本件(三)の建物で、原告らと競業関係にある時計、宝石、貴金属の販売等を営み、もつて原告らに後記損害を被らせているものというべきであるから、原告らは、被告らに対し、右営業の禁止を求める権利があるものというべきである。<中略>

四次に、前記の如く、被告らが昭和五四年一一月二一日から本件(三)の建物において前記営業を始めたことにより、原告らの被つた損害について判断する。

<証拠>によれば、次の事実が認められる。すなわち、被告らが、本件(三)の建物で、宝石、時計販売等の営業を始めたことにより、その隣りの本件(二)の建物で同種の営業を営む原告ら方の売上げが減少し、原告らは損害を被つたこと、ところで、被告らが本件(三)の建物で前記営業を営む以前の昭和五四年二月から同年一〇月までの九ケ月間の本件(二)の建物における原告らの宝石等の売上額は、合計金六一五万五六〇〇円であつて、そのうちから一五パーセントの物品税をさし引いた残額金五二三万二二六〇円の約五割である金二六一万六一三〇円(一ケ月平均金二九万〇六八一円)がその純益であつたこと、ところが、被告らが本件(三)の建物で前記営業を始めた後の昭和五五年二月から同年一〇月までの本件(二)の建物における原告ら方の宝石等の売上額は、金一九九万九〇〇〇円であつて、前年同期の約三分の一以下に減少し、その利益も、右金一九九万九〇〇〇円から一五パーセントの物品税を差引いた残額の約五割である金八四万九五七五円(一ケ月平均金九万四三九七円)に減少し、結局一ケ月平均約金一九万六〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て)の純益が減少し、原告らは、同額の損害を被つたこと、以上の事実が認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。したがつて、右損害が一ケ月金五〇万円であるとの原告らの主張のうち、右一ケ月金一九万六〇〇〇円を超える部分は失当である。

そして、原告らが右損害を被つたことについては、前記三に認定したところから、被告らに故意又は少くとも過失があつたものというべきであるから(共同不法行為)、被告らは各自連帯(但し、不真正連帯)して、原告らに対し右損害を賠償すべき義務がある。

(後藤勇 千徳輝夫 小泉博嗣)

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